担当医より「免疫ゼロの状態になるので細菌感染などにより身体のあらゆるところに色々な症状が出ます」という説明があります。
2015/01/25
担当医より「免疫ゼロの状態になるので細菌感染などにより身体のあらゆるところに色々な症状が出ます」という説明があります。
そのなかで移植する前に同じ大学病院内で顎歯科受診があるのです。
歯の根っこには自分も気がつかないような小さな膿があったりします。
移植時は免疫機能と白血球を致死量ギリギリの抗がん剤を使ってゼロにしてしまいます。
もし何かのきっかけでそれが化膿したら死にも直結するような大問題になりかねませんので、少しでも疑いのある歯は容赦なく抜かれてしまいます。
病院で知り合った私の患者仲間もだいたい5~7本くらい抜かれてしまいました。
無事に移植が成功してもこれから先は「歯がない人」です。
そんな覚悟の中、私を見てくださったS先生はなんと
「普通の医師なら8本くらい抜かないといけないと言われるでしょうけど、ボクが見るに抜かなくてもいけると思いますよ」
というご判断でした。
このご判断には私の内科主治医も確認をとるほど、あまりないことらしく、そんななか移植に臨みました。
結果は、、、
移植患者の誰しもがなってしまう口内炎20個や粘膜障害や肌荒れ以外は問題なく
懸念されていた歯も幸いにトラブルは無かったのです!
運が良かったということもあるのでしょうが、これはかなり嬉しい事です。
もし歯を何本も抜いていたら、いま差し歯や入れ歯。美味しいものもまずくなってしまいます。
これが「クオリティー・オブ・ライフ」です。
治れば良いというものではなく、生きていればいいというのではなく
高いクオリティー=楽しくイキイキと生きて行けるかが問題なのです。
その後の診察で歯を抜かなくていいと診断してくださったS先生に再会。
「お元気そうで何よりです。あのときは周りからなんで抜歯しないんだって言われて久保田さんの歯を抜かないようにがんばったんです」
え!?私はびっくりしました。
当時その事で歯科医の先生方で話し合いが持たれ大反対をされたようで、それでもS先生は周りの先生方を納得させて抜かない選択を貫いてくださいました。
私がきっかけで歯科医によって抜く抜かないの差が出ないように新しいガイドラインを作ったり
会議を重ね話し合いながら学会に発表し進めているとの事でした。
患者さんの歯を抜けば歯医者さんも内科医さんも安心でリスクは無くなります。
しかしながら患者にとっては今後の歯がない人生は大問題です。
患者さんのことを考えれば「クオリティー・オブ・ライフ」は無視出来ないものです。
抜いてしまえば医師側のリスクは無いのに、難しい決断を貫いてくれたS先生はそこで戦ってくれました。
自分の立ち位置よりもその患者さんの立場に立った信念のお医者さんに出会えたことに本当に感謝いたします。
そしてこの「クオリティー・オブ・ライフ」というものは
何も病院にいる患者さんだけのものではないのです。
私たちも「クオリティー・オブ・ライフ」ということを考えていかないと
ただ息してご飯食べて排泄して寝る、生きながらえている、ただ生きているだけになってしまうかもしれません。
高いクオリティーで楽しくイキイキと生きて行けるかが問題なのです。
病気がなかったとしても、五体満足でも、ただ生きているだけでは意味はありません。
クオリティーの高い人生を送って笑ってワクワクして、幸せな人生を送って行きましょう。
そして私もS先生のように、なにか信念があるのか自分自身で確認していこうと思います。
ありがとうございました。